背割りしたイノシシのお腹の中にひっついている白いものが内臓脂です
ラードは揚げ物には最適ですし、炒め物などにも使えます。台湾の庶民料理などでは、ラードと醤油をご飯にかけて食べる「ラードご飯」ってのもあるそうです。また、料理に使う以外にも、すり傷などに塗る軟膏や、皮なめしに使う油、更に加工して手作り石鹸などに利用できます。
ラードで炒め物
油かすはラードを取ったあとの文字通り「かす」ですが、そのまま塩をつけて食べても酒のアテによいですが、炒め物やお好み焼き、焼きそばに入れたりするのもよいです。
被差別部落の伝統食材の油かすは、大腸や小腸から脂を取ったあとのもののみを指しますが、広義には豚や牛の脂身などからとれるものも含みます。
油かす入りお好み焼き
ラードの作り方には、水で煮出す方法と直接火にかけて抽出する方法の2つがあります。水で煮出す方法の方がより純度の高いラードが作れますが、手間は掛かります。直火の方は、お手軽ですがちょっと「おいしそうな」ニオイが残ります。副産物の油かすが取れるのはこちらです。
で、最近のはやりは、両方を組み合わせていいとこ取りをするやり方なので、今回はそれを紹介します。
では、以下はラードと油かすの作り方
1.脂身・内臓脂を1〜2センチ角ぐらいに切り分けます。塊のままだと火の通りが悪く脂を抽出するのに時間がかかるからです。ちなみに、1頭イノシシを捕るごとにやってたら大変なので冷凍庫に保存しておいて何頭分かまとめてやります。
こんな感じで適当で良いです
2.大きめの鍋に同量くらいの水と一緒に投入して火にかけ、沸騰してきたら弱火にして1時間ほど煮出します(この時間も適当です。煮る量にもよるので、よく脂が溶け出したと思ったらやめます)。この際に、カットした内臓脂を大きめのだし袋などに入れておくと、あとで濾したりする手間が省けてよいです。この際、塩を入れると不純物が取れやすいというので、毎回塩をパラパラ入れてますが、ホントに効果があるのかは知りません。
カットした内臓脂を出し袋に入れて縛る
こんな感じで煮出します。
3.煮出し終えたら、だし袋の中身を中華鍋に移します。ここから直火抽出に移行します。煮出した方の脂は冷まして固まるのを待ちます。夏場だと融点の低いイノシシ脂はなかなか固まらないので、冷蔵庫などで鍋ごと冷やします。
出し袋の中身。まだそれなりに脂が残っているのがわかります。
火にかけるとどんどん脂が溶け出します。この時に注意するのはなるべく低温で抽出するということです。というのは、この時点でだいぶ水分を含んでいるので高温でやると跳ねて危ないです。また、油は高温にすると酸化するとか悪くなるとよく言われているので、それを避ける意味もあります。
完全に水が飛んで、油かすが美味しそうな茶色になってきたらOKです
これが油かすです。超高カロリーな酒のアテです(笑)
4.抽出できた脂を布などで濾してからタッパーなどに入れて保存します。タッパーの耐熱温度には気をつけましょう。これを冷蔵庫で冷やした完成です。ちなみに、この直接火にかけたやつは例の「おいしそうな」ニオイのラードなので料理に使う用です。イノシシの旨味が残っていて料理も美味しくなります。
液体のうちは茶色っぽいですが・・・
個体になると白っぽくなります
5.さて、水で煮出した方の脂の処理に戻ります。
しっかり冷めたら脂と水が分離して上の方で脂が固まっています。
それを別の鍋に移します。その際に脂の裏に色々不純物がひっついていますがあまり気にしなくていいです。
そして、それにまた同量くらいの水を加えて加熱します。するとこんな感じでまた液体になるので、また冷まします。
これを繰り返して、分離した水が濁らなくなったら完了です。これを何回やるかはそのラードの使用目的によりますが、軟膏や保湿剤など肌に塗る場合は丁寧にやったほうがいいでしょう。
2回めの残り水もまだこれくらいは濁っています
満足できる状態になったら最後にもう1回溶かします。
そして、それを牛乳パックに注いで冷凍します。
凍ったラードを牛乳パックから取り出すと、こんな感じで底の方に不純物と残った水分が固まるのでそれを包丁などでカットします。
あとは、再度溶かして瓶などに移し替えてもいいですし、このままフリーザーパックなどに入れて保存してもいいです。ラードなどの動物脂は植物油などと比べると酸化しにくいと言われてますが、長期保存する場合はなるべく空気に触れないようにします。
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◆猪脂と鹿脂の融点の違い
◆油かす入りお好み焼き
※当記事は2007年10月24日投稿の記事のリニューアルです。